さてスラムダンク3巻である。
前巻では、桜木が「おれはバスケットマンだから」と柔道部への入部を断ったところを赤木先輩が目撃し、桜木がバスケとちゃんと向き合おうとしていることを感じとり、見直すところで終わっていた。
そのためか、3巻の冒頭の練習シーンでは、赤木先輩がいよいよ桜木のシュート練習を解禁する。
ここで大人しく基礎的なシュート練習をすればいいのだが、桜木なのだからそう素直にはいかない。
赤木晴子に良いところを見せようと、ここぞとばかりにスラムダンクを決めようとする。
そんな態度に、赤木先輩が早々にブチギレてしまうのだった。
この桜木と赤木先輩のやり取り、なんとなく自分と息子の姿を重ねてしまう。
親心としては、規則正しい生活を送り、提出期限通りに宿題をすませ、定期テスト前には机に向かい、学校で配られたプリントは確実に親に渡してほしいところである。
しかし子供というものは、まったく親の思い通りにはならないのだ。
「次はちゃんとする」という言葉を何度信じ、何度裏切られてきたことだろう。
きっと赤木もこんな心境なのだろう。
口うるさくしたくないのは やまやまなのだ。桜木が自ら真っ当な練習をしてくれることを願っているのだ。彼に期待するからこそ、思い通りに動かない桜木の行動に苛立つのだろう。
そんな赤木の思いが桜木に届く日は来るのだろうか。
思わず赤木を同志の様に感じてしまう。
しかしなんとここで、桜木が一歩大人になる瞬間がとうとうやってきた!!
レイアップシュートのフォームのお手本を見せてくれる流川に、はじめこそ「手がすべった」とわざとボールを当てて嫌がらせをしていた桜木だったが、さすがにキレた流川にボールを当て返されて目が覚めたのか、「ワルかった」「もう一度お手本を見せてくれ」と頭を下げたのだ!!
ここぞというときにちゃんと反省し、「シュートが入らなくてイラついていた」と自分の心の動きを客観視し、ライバルにも必要とあれば頭を下げられる。
すごいぞ桜木。
・・・と思ってページを捲ったが、私の感動はたった1コマで見事に裏切られた。
謝ったふりで油断させ、今度は大量のボールを流川にぶつける桜木。
私の感動を返してくれ。
まだまだ彼のバスケットマンとしての成長には時間がかかりそうである。
翌朝、公園のバスケットゴールでこっそりレイアップシュートの自主練をする桜木。
そこにランニング中の赤木晴子が通りかかる。
桜木の努力する姿に感心し、「これだけは得意だから」とコーチを買って出る赤木晴子。
本当にいい子である。女性目線からみても、ショートパンツ姿がとても可愛らしい。
ずっと苦戦してきたレイアップシュートだったが、ここで「手に力を入れず、ボールをゴールリングに置いてくる」をイメージすることがコツだと掴み、みごとに成功させることができた。
さすがは作者がバスケ経験者。バスケットのプレーのポイントまで学べてしまいお得な気分である。
主人公成長ものの漫画で、大切なのはこのようなひとつひとつの成長過程を丁寧に見せてくれるかどうかだと私は思っている。
努力をし、練習を積み重ねて、やっとの思いでステップアップした主人公の姿を目にするからこそ、「強くなった主人公」をすんなりと受け入れることができる。
しばらく修行にでかけて、帰ってきたら別人のように強くなっていた、なんて展開もよく目にするが、それでは説得力に欠ける。それでライバルに勝利しても、そこに感動を見出すのはなかなかに難しいことが多々ある。
スラムダンクでは、桜木がバスケ素人から少しずつこうやって成長していく軌跡を見せてもらえそうだと、期待が膨らむ。
放課後もレイアップシュートをひたすら練習する桜木。
基礎をおろそかにせず、地道な努力を続けているあたり、やはり「バスケに対する姿勢」も成長している。
そこに新キャラ登場である。
関西弁の他校の生徒。
ぱっと見、桜木のワル仲間の水戸に似ている。とりあえず確認した2人の相違点は、おでこの後れ毛の位置(水戸は向かって左、新キャラは向かって右)である。
このキャラもなかなかに今後の存在感が大きくなりそうだが、そうすると、1巻のレビュー記事のコメントで教えていただいた「主要キャラ」の数が合わなくなってしまう。
柔道部のキャプテンと、この新きゃら、主要メンバーから漏れてしまうのは一体どちらなのか。
さて、彼が何者だったのかというと、今度練習試合をすることになっている陵南高校のバスケ部メンバー相田彦一とのこと。桜木と同じ1年生だ。
この相田彦一だが、これまたとても素直な子である。
試合前に湘北高校バスケ部の実力者である流川と赤木をチェックしにきたのだが、「俺はその2人よりも強い」と豪語する桜木の言葉をまるまると信じてしまった。
「バッシュとは何か」と、バスケ部のエースであれば到底飛び出てこないはずの桜木のセリフにも、「そうか、この方は経済的にバッシュを賈う余裕はないのだ。実力があれば、バッシュにこだわらなくとも、体育館ばきで十分なのだ!」と納得してしまう素直っぷり。
この曇りなき真っ直ぐな瞳が、試合当日に落胆の色を宿すであろうことを思うと、今から胸が痛くなる。
そんな相田から、「陵南高校バスケ部のエース」の存在がほのめかされる。
今度こそ最後の主要キャラか??なんとなく相田も「主要キャラ」という雰囲気ではないと感じ始めていたので、つい反応してしまう。
場面は変わって、翌日に迫った陵南高校との試合にむけ、練習を続ける湘北高校バスケ部。
見開きでたっぷりと赤木・流川・桜木のシュートシーンを魅せてくれるが、しっかりと完全なる3段落ちになっているのが面白い。「スポ」じゃないのよ、桜木。
しかし桜木、ちゃんと基礎練習もこなし、指導を守りながら地道に練習しているようである。
赤木もまた、桜木にリバウンドを教えるために、「天才ならどうにかなると思って」と、桜木のプライドをくすぐるなど、桜木の操縦術が身についたようである。
かなり湘北高校バスケ部がまとまってきたのではないだろうか。
しかし安西先生、今の所まだニコニコ座っているだけだな・・・。どう爪痕を残し始めるのか、今後の展開に期待している。
とうとう試合当日。もはや応援団にしか見えない赤木・流川・桜木トリオ。電車内で謎の空気椅子の特訓をしながら敵地へと向かう。
当日特訓したら、体力が無駄に減るのでは・・・とか、空気椅子で座らないなら、他の乗客に席を譲ってあげて、とか老婆心がやや騒ぐが、そんな細かいツッコミをしては無粋だろう。
陵南高校に到着すると、キャプテンの魚住が登場。
赤木とは因縁があるようだ。
・・・この方は純粋な日本人だろうか??どう見てもハーフ顔なのだが・・・。魚住という名前がしっくりこなさすぎる。どちらかというとMr.フィッシュだろう。
エースの仙道というキャラのお披露目はまだお預けのようだ。
試合の展開ももちろん気になるが、こうやってワクワク感をさらに演出するところに、また井上先生の天才っぷりを感じる。
桜木たちにユニフォームが配られる。
番号がかなり重要のようだ。
バスケについての知識がないので、調べてみよう。
なるほど、伝統的にキャプテンは4番、副キャプテンは5番らしい。
10番はエース的なメンバーが背負う番号のようだ。
その他にポジションとの関係では、
1番:ポイントガード
2番:シューティングガード
3番:スモールフォワード
4番:パワーフォワード
5番:センター
とのこと。
NBAの有名選手の番号を真似たり、自分の好きな数字を選ぶ場合もあるようだ。
ということは、なんだかんだ桜木が10番をもらえたことは、相当ミラクルなのではないか。
ここで散々存在をチラ見せされてきた陵南高校バスケ部エースの仙道が登場。
んん??
申し訳ないが、桜木のワル仲間の水戸と再び印象が被ってしまった。彼の場合は、前髪はすべて立ち上がっているところが見分けポイントか。
魚住キャプテンが結構な濃い外見だったので身構えていたが、仙道はさわやかイケメンである。
桜木の宣戦布告にもニコリとさわやかに握手で対応した。
只者ではなさそうだ。
4巻につづく・・・!!