雑誌概要

「ココハナ」は、集英社が発行する月刊の女性向け漫画雑誌である。大人の女性が抱える仕事、恋愛、結婚、友情といった現実的な悩みや喜びを描く作品が多く、読者層の共感を呼ぶことを特徴としている。

「ココハナ」の歴史

「ココハナ」は、2011年11月28日に創刊された。その前身は、1980年から長きにわたり発行されていた集英社の老舗女性向け漫画雑誌「YOU」(ユー)である。「YOU」は長年、女性向け漫画の代表的な存在として多数の人気作を生み出してきたが、時代や読者ニーズの変化に対応するため、リニューアルの必要性が生じたのである。

そこで、「YOU」のコンセプトと一部の連載作品を引き継ぎつつ、より洗練され、現代の大人の女性のライフスタイルに寄り添う新しい雑誌として「ココハナ」が誕生した。創刊時には、「YOU」で高い人気を誇っていた森本梢子氏、稚野鳥子氏といった人気作家の作品が移行したことに加え、東村アキコ氏(連載途中で移籍)の作品も掲載された。これにより、新たな顔ぶれの作家たちと共に、新時代の女性向け漫画誌としての地位を確立するに至ったのである。

「ココハナ」の特徴

  1. ターゲット層: 主に20代後半から40代までの女性をターゲットとしている。キャリア、結婚、子育て、夫婦関係、親との関係、趣味、自分磨きといった、人生の多様なフェーズにおける女性の関心事や悩みを題材とした作品が多く掲載されている。

  2. テーマの多様性: 恋愛一辺倒ではなく、仕事とキャリアの葛藤、親友との関係性、家族の絆、自己肯定感の模索など、より広範なテーマを取り扱っている。コメディタッチの作品から、心に深く響く感動的な作品、ミステリー要素を含むものまで、幅広いジャンルを扱っている。

  3. リアルな共感性: 作品に登場するキャラクターが抱える問題や感情は、読者が日常生活で経験しうるリアルなものである。そのため、読者は登場人物に感情移入しやすく、「共感できる」「自分もそう感じる」といった感情を抱きやすい作品が多い。

  4. 絵柄の傾向: シャープで洗練された絵柄が多く、キャラクターの表情や感情の機微を繊細に表現する画風が目立つ。過度にデフォルメされたり、極端に可愛らしい絵柄よりも、等身大の人物を描く傾向にある。

  5. メディアミックス: 掲載作品は、人気が出るとテレビドラマ化や映画化されることが非常に多い。これは、作品の質の高さと、現代の視聴者のニーズに合致するストーリー展開が評価されている証左である。

  6. おしゃれで読みやすいデザイン: 誌面全体がスタイリッシュであり、大人女性が手に取りやすいデザインとなっている。雑誌名の「ココハナ」も、「心に花を」という意味合いが込められており、日々の生活に癒しやときめきを届けるという雑誌の姿勢が表現されている。

  7. 発売日: 毎月28日頃に発売されている。

代表作品

「ココハナ」からは数多くのヒット作が生まれており、その多くがテレビドラマ化や映画化されている。

  • 森本梢子 作品

    • 高台家の人々』:妄想癖のあるOLと、人の心が読めるサイキック能力を持つエリート兄弟との恋愛を描くファンタジー・コメディである。映画化されている。

    • アシガール』:戦国時代にタイムスリップした女子高生が、若君に恋をして足軽となり奮闘する歴史ラブコメディである。NHKでドラマ化され大ヒットした。

  • コナリミサト 作品

    • 凪のお暇(なぎのおいとま)』:空気を読みすぎるOLが人生をリセットし、アパートで質素な生活を始めることで新しい自分を見つけていく物語である。TBSでドラマ化され、共感度の高さから話題を呼んだ。

  • いくえみ綾 作品

    • バラいろの約束』:複数の男女が複雑に絡み合う人間関係を描く群像劇である。繊細な心理描写で人気の高い作家である。

  • 稚野鳥子 作品

    • クジャクのダンス、誰が見た?』:幼い頃に自分を苦しめた義父と再会した主人公が、過去と向き合いながら人間関係を再構築していくヒューマンサスペンスである。

  • 池谷理香子 作品

    • ごほうびごはん』:美食家の女性会社員が、日々のご褒美として様々なグルメを堪能する日常グルメ漫画である。

  • 宮脇ゆきの 作品

    • お家でDO!』:引っ越しと片付けを巡るドタバタを描くコメディ作品である。

  • 樋口橘 作品

    • 歌いながら恋をして』:少女漫画誌「花とゆめ」で大ヒットした『学園アリス』の作者による、ココハナで連載されたラブストーリーである。

  • 小栗左多里 作品

    • ダーリンは外国人』:国際結婚の日常を描くエッセイ漫画のシリーズであり、映画化もされている。ココハナでも多数の続編が連載されている。

これらの作品群は、「ココハナ」が幅広いテーマと作家性を尊重し、大人の女性が楽しめる多様な物語を提供していることを示している。「ココハナ」は、単なる暇つぶしではなく、「自分ごと」として楽しめる深いテーマ性を持つ漫画を求める大人の女性にとって、有益な漫画雑誌である。