雑誌概要

「ビッグコミック」は、1968年2月29日に同年4月号として小学館から創刊された男性向け漫画雑誌である。通称は「ビッグ」や「ビッコミ」だ。創刊当初は月刊誌であったが、1969年4月25日号からは毎月10日・25日の月2回発行となっている。主に成人男性をターゲットとし、多様なジャンルの骨太な作品を掲載する、小学館の青年漫画誌の草分け的存在である。単行本は「ビッグコミックス」レーベルで発売され、2021年からはデジタル版(電子版)の配信も開始している。

特徴

  1. 「ナマズ」のマスコットマークと著名人の似顔絵表紙:
    雑誌のマスコットマークは「ナマズ」であり、これは「ビッグコミック」系列誌で共通して使われている。また、表紙の独自性が大きな特徴だ。創刊当初は若者の男女や猿のイラストが表紙を飾っていたが、1970年10月25日号からは日暮修一による著名人の似顔絵が表紙を飾るスタイルが確立された。その後、金子ナンペイ、為井英貴へと担当が引き継がれ、現在もこの伝統的なスタイルが維持されている。

  2. 多様で奥深いジャンルの作品群:
    成人男性を対象としているため、社会派ドラマ、歴史、サスペンス、ギャグ、スポーツ、SF、人間ドラマなど、幅広いジャンルの作品が掲載されている。単なるエンターテイメントに留まらず、社会問題や人間の深層心理に切り込むような、骨太で読み応えのある物語が多いことが特徴だ。長期連載のヒット作が多く、読者がじっくりと作品の世界に没入できる構成となっている。

  3. 著名な漫画家と新人作家の育成:
    手塚治虫、石ノ森章太郎、さいとう・たかを、ちばてつやといった漫画界の巨匠から、かわぐちかいじ、星野之宣、細野不二彦といった人気作家まで、多数の著名な漫画家が作品を発表してきた。同時に、新人作家の登竜門としても機能し、新しい才能の発掘と育成にも力を入れている。

  4. 豊富な系列誌とメディアミックス展開:
    「ビッグコミックオリジナル」「ビッグコミックスピリッツ」「ビッグコミックスペリオール」といった多数の系列誌を生み出し、それぞれが独自のターゲット層と作風を持つことで、小学館の青年漫画誌ラインナップの中核を形成している。また、掲載作品の多くがアニメ化、ドラマ化、実写映画化されるなど、積極的なメディアミックス展開が行われ、社会的な知名度を高めてきた。

  5. 別冊・増刊号の展開とデジタル配信:
    「特集ゴルゴ13シリーズ」や「ビッグコミック増刊号」といった別冊・増刊号を多数発行し、本誌とは異なる企画や読み切り作品を展開している。特に「別冊ビッグコミック 特集ゴルゴ13シリーズ」はコンビニコミックの元祖としても知られる。また、2015年からはウェブコミック配信サイト「eBigComic4」を小学館とイーブックイニシアティブジャパンが共同で開始し、過去作品やオリジナル作品の無料公開も行っている。

代表作品

「ビッグコミック」からは、その歴史の中で数多くの名作が誕生している。

  • 『ゴルゴ13』(さいとう・たかを、さいとうプロ作品):
    1968年の創刊から連載が続く、世界最長連載漫画としてギネス世界記録にも認定されている超大作。デューク東郷という超一流のスナイパーの活躍を描くアクションサスペンスであり、雑誌の顔とも言える存在だ。

  • 『HOTEL』(石ノ森章太郎):
    高級ホテルの裏側で働く人々を描いた群像劇で、石ノ森章太郎の代表作の一つとして知られる。ドラマ化もされた。

  • 『総務部総務課山口六平太』(原作:林律雄、作画:高井研一郎):
    会社の総務部を舞台に、人情味あふれる山口六平太の活躍を描いたコメディ。長期連載され、多くの読者に愛された。

  • 『のたり松太郎』(ちばてつや):
    破天荒な性格の力士・松太郎の成長を描いた相撲漫画。ちばてつやの代表作であり、泥臭い人間ドラマが魅力だ。

  • 『MW』(手塚治虫):
    悪のカリスマ・結城美知夫と、彼を止めようとする神父・賀来巌の対立を描いたサスペンス。手塚治虫による社会派作品として高く評価されている。

  • 『陽だまりの樹』(手塚治虫):
    幕末から明治維新にかけての時代を舞台に、手塚治虫の先祖である医師・手塚良庵の青春と葛藤を描いた歴史ドラマだ。

  • 『築地魚河岸三代目』(原作:大石けんいち他、作画:はしもとみつお):
    築地魚河岸を舞台に、料亭の御曹司が魚河岸で働くことになり、様々な人間模様や食文化に触れるグルメ漫画。テレビドラマ化もされた人気作である。

  • **『空母いぶき』**シリーズ(かわぐちかいじ、協力:恵谷治):
    架空の航空母艦「いぶき」を擁する日本の海上自衛隊の活躍を描く軍事シミュレーション。リアルな描写と国際情勢への鋭い視点が特徴で、実写映画化もされた。現在は『空母いぶき GREAT GAME』が連載中だ。

  • 『正直不動産』(漫画:大谷アキラ、原案:夏原武、脚本:水野光博):
    嘘がつけなくなった不動産営業マンが、正直すぎる営業で顧客と向き合う姿を描くコメディ。テレビドラマ化され、幅広い層に知られるようになった。

  • **『BLUE GIANT』**シリーズ(石塚真一):
    ジャズに情熱を傾ける主人公の成長を描く音楽漫画。国内外で高い評価を受け、アニメ映画化もされた。現在は『BLUE GIANT MOMENTUM』が連載中だ。

これら以外にも、数々の質の高い作品が「ビッグコミック」の歴史を彩り、読者に深い感動を与え続けている。