月刊アフタヌーン

『月刊アフタヌーン』は、1986年に講談社から創刊された月刊の青年漫画雑誌である。毎月25日に発売されている。略称は「アフタヌーン」。
創刊当初は、兄弟誌である『モーニング』の「二軍」のような位置づけで、新人漫画家の育成に注力する媒体としてスタートした。漫画家育成のための「四季賞」を主催するなど、無名の新人作家の作品を積極的に掲載し、若手才能の発掘に力を入れた。次第にその誌面の厚さが特徴となり、1992年には1000ページを突破、一時期は『月刊コロコロコミック』を上回る誌面の厚さを誇る「最厚の漫画雑誌」としても知られた。その中で『寄生獣』や『ああっ女神さまっ』といったヒット作が生まれ、雑誌の看板を確立した。
近年では、人気作品のメディアミックス展開に積極的であり、他誌からの人気作品の移籍を受け入れたり、電子版の同時配信、Webマンガサイト「&Sofa」の開設など、時代に合わせた多様な試みを続けている。
多様で質の高い作品群:
青年漫画誌でありながら、SF、ファンタジー、アクション、ミステリー、日常系、ギャグ、青春群像劇など、極めて幅広いジャンルの作品を掲載している点が特徴である。独特の世界観や深いテーマを持つ作品が多く、既存のジャンルに囚われない独創的な物語が数多く連載され、読者層も広範である。
新人発掘と長期連載のバランス:
創刊以来、新人漫画家の発掘と育成に力を入れ、その登竜門である「四季賞」を通じて数多くの才能を世に送り出してきた。その一方で、『ああっ女神さまっ』や『寄生獣』、『無限の住人』など、長期にわたる人気連載作品が多数存在し、雑誌の根幹を支えている。新旧のバランスが良く、常に新しい才能と熟練の作家の作品が共存している。
実験的な誌面作りと先進性:
かつては「圧倒的なページ数」を誇る物理的な厚さで他誌と差別化を図った。また、時流に合わせてフィギュアなどの豪華付録を付けたり、講談社内の他雑誌(例:『週刊少年マガジン』からの『ヴィンランド・サガ』移籍)からの人気作品の移籍を受け入れたりするなど、常に実験的な試みを続けている。近年の電子版同時配信や、Webサイト「&Sofa」でのオリジナル漫画・コラム掲載といったデジタル展開もその一環であり、メディアの変化に柔軟に対応している。
文学的・芸術的評価の高さ:
掲載作品は、手塚治虫文化賞、講談社漫画賞、文化庁メディア芸術祭など、数々の権威ある漫画賞を受賞している。これは、単なるエンターテインメントに留まらない、文学的・芸術的価値の高い作品が多く、漫画界全体に大きな影響を与えていることを示している。
『月刊アフタヌーン』からは、その歴史の中で多くの時代を代表する名作が誕生している。
『ああっ女神さまっ』(藤島康介):
女神と人間の同居生活を描いたラブコメディで、長期にわたり連載され、アニメ化など多数のメディアミックスが行われた看板作品である。講談社漫画賞も受賞した。
『寄生獣』(岩明均):
人間と寄生生物の共存と対立を描いたSFサスペンスで、深いテーマ性と衝撃的な展開が社会現象を巻き起こした傑作である。講談社漫画賞、星雲賞を受賞し、アニメ化、実写映画化もされた。
『無限の住人』(沙村広明):
江戸時代を舞台に、不死身の剣士の復讐と戦いを描いた残酷な剣客活劇で、その独特の筆致と描写が評価され、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した。
『ヨコハマ買い出し紀行』(芦奈野ひとし):
近未来の終末世界を舞台に、ロボットの主人公が穏やかな日常を過ごすSF日常漫画で、独特の癒やしと哲学的な雰囲気が特徴である。星雲賞コミック部門を受賞した。
『蟲師』(漆原友紀):
異形の生命体「蟲」と、それを研究し、人々の病や現象を解決する「蟲師」の旅を描く幻想譚で、その文学的な世界観と静謐な描写が評価され、手塚治虫文化賞、講談社漫画賞などを受賞した。
『おおきく振りかぶって』(ひぐちアサ):
高校野球を舞台にした青春スポーツ漫画で、選手の心理描写の深さと、リアルな野球の描写が評価された。手塚治虫文化賞、講談社漫画賞を受賞した。
『ヴィンランド・サガ』(幸村誠):
11世紀のヴァイキングの時代を舞台に、復讐を誓う少年と様々な人々の生き様を描いた歴史アクションで、緻密な時代考証と壮大な物語が人気を博している。
『シドニアの騎士』(弐瓶勉):
人類が宇宙を旅する巨大な宇宙船「シドニア」を舞台に、異生物との戦いを描くハードSF作品で、独特の造形と世界観が特徴である。アニメ化もされた。
『宝石の国』(市川春子):
宝石の体が特徴のキャラクターたちが、謎の敵「月人」と戦うファンタジー作品で、その独創的な絵柄と哲学的な世界観が人気である。アニメ化もされた。
『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』(原作:草水敏、漫画:恵三朗):
病院の診断の裏側を支える病理医を主人公にした医療ドラマで、その専門性の高さと人間ドラマが評価され、講談社漫画賞を受賞した。
『ブルーピリオド』(山口つばさ):
美術をテーマにした青春群像劇で、美術を志す主人公の葛藤と成長を鮮やかに描いている。マンガ大賞、講談社漫画賞などを受賞し、アニメ化もされている注目作品である。
『天国大魔境』(石黒正数):
崩壊後の日本を舞台に、謎に包まれた世界とキャラクターたちの旅を描くSFアドベンチャーで、「このマンガがすごい!」第1位を獲得した。アニメ化もされた。
『スキップとローファー』(高松美咲):
地方から東京の高校に入学した主人公の等身大の青春と成長を描く学園コメディで、その繊細な心理描写と温かい人間関係が多くの読者から支持されている。アニメ化もされた。
『メダリスト』(つるまいかだ):
フィギュアスケートを題材に、才能を持つ少女と挫折したコーチが、共に夢を追いかける熱いドラマを描くスポーツ漫画である。
『ダーウィン事変』(うめざわしゅん):
人間とチンパンジーのハイブリッドであるヒューマンジーを主人公に、人間社会の倫理や差別問題を問う社会派サスペンスで、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞などを受賞した。
これら以外にも、多くの独創的で質の高い作品が『月刊アフタヌーン』から生み出され続けている。