『はじめの一歩』を初めて読んだのはいつだっただろうか…
たしか兄が持っていた単行本を読んだのが『はじめの一歩』との出会いだったと記憶している
何歳の時かはさだかではないが、とにかく子供の頃の話であることは間違いない。
1巻から読み始めたはずだが、すぐに夢中になったこともよく覚えている
つまり最初からしっかり『掴みはOK』といった感じのマンガだったのだ。
「強いって、どんな感じですか?」『はじめの一歩』が持つ、心を掴むストーリーの原点
これはやはり主人公の一歩がただ単にボクシングに興味を持って始めるというストーリーではなく、学校でいじめにあっている中でプロボクサーの鷹村守と出会い、仕返しをすることを目的にではなく、『強いとは何なのか?』ということからボクシングに興味を持つあたりが心をグッと奪うのであろう。
実際に一歩が鷹村に「強いってどんな感じですか?」と涙ながらに尋ねるシーンはこちらの涙腺を崩壊させる破壊力を放つ。
この漫画の凄いところは「モブキャラ」がいないこと
『はじめの一歩』のすごいポイントはいくつもあるが、忘れないうちに挙げておきたいのが『モブキャラ』があまりいないことである。
もちろん存在するはするのだが、一般的なマンガに比べて圧倒的に少ないように感じる。
鷹村はともかく青木や木村に関しては、最初こそモブっぽい立ち位置かなと思っていたのだが、彼らも一生懸命に練習に打ち込み、命をかけて試合に望む姿には見事に心を打たれてしまう。
さらにギャグ担当という面でも重責を担っているので、鷹村や宮田と比べてメインではない匂いをプンプンさせておきながら、欠かせないキャラクターにしっかり描かれている。
個人的には学生時代の鷹村との出会いのくだりも好きである。
木村が間柴に挑戦した試合などは、涙なしでは見られない奮闘を見せてくれている。
一歩が参加した合コンも彼らなしでは盛り上がることはなかったし、そもそも開催されていないであろう。
とは言っても木村も青木も鴨川ジム所属という一歩と非常に近い距離にいるので、しっかり描かれても不思議ではないのかもしれない。
では一歩の対戦相手に関してはどうだろうか?
一番最初の新人王トーナメントから一歩の対戦相手は常にこれでもかと背景がしっかり描かれている。
抱えている事情や葛藤や弱さがしっかり表現されているため、試合のシーンでは怖いぐらい感情移入して歯を食いしばって見入ってしまう。
新人王トーナメントで言えば小橋など超モブキャラとして扱われそうなキャラクターも、ものすごく魅力的に描かれているし、一歩を追い詰めておきながら儚く散ってしまうシーンに涙した者も少なくないであろう。
こういった部分は『はじめの一歩』の大きな魅力になっていると心から思う。
主人公だけじゃない!全キャラクターが輝く物語
主人公の一歩が大活躍している展開ももちろん楽しいのだが、他のキャラクターが描かれている場面も非常に秀逸で、個人的にはハードスケジュールと減量に苦しみながらアジアを渡り歩いている宮田一郎を描いた回もとても好きで、リスクを承知で全体重を乗せて放つカウンター『ジョルト』を決めた時には、人目を憚らずコミック片手に咆哮してしまったほどである。
さらに宮田は木村の間柴対策に親身になって付き合うなど、クールに見えて人情に超厚いところも素敵なのである。
なんだかんだで鷹村を慕っている姿にも非常に好感が持てる。
千堂武士というキャラクターの描き方も見事で、試合を始めとした千堂と一歩の絡みは言わずもがなで、千堂が鴨川ジムの面々からも可愛がられたり、宮田とも絡むシーンがあるなど愛さずにはいられないキャラクター に描き上げられている。
もっと多くのキャラクターの魅力を紹介したいが、あまりに長くなってしまうので自重したいと思う。
私は相手の顔色をまったく考慮に入れずに喋り続ける無神経な人間にはなりたくはないのだ。
涙なくしては語れない、母と息子の絆
それでもどうしても、もうひとつ触れておきたいことがある。
一歩と母親の関係である。
一歩は父親を早くに亡くしているため、人一倍母親思いの青年である。
ボクシングをやりながら家業の釣り船屋を手伝う一歩の姿に胸を打たれると同時に、母親の一歩を見る眼差しにはもっと胸を打たれるのである。
そしてかつて一歩をいじめていた梅沢と一歩と一歩の母親の関係も涙なくして見ることはできない。
まとめ:『はじめの一歩』は、頑張る勇気を与えてくれる
打たれてもひるまずに突き進む一歩のスタイルは確実に彼の体を蝕み、引退という決断を下すことになるが、引退後にさらに強くなっているのでは?という展開を見せ、ますます目が離せない状況になっている。
しかし終わらずに長く続いている展開に「もう結末を迎えてほしい」という意見もチラホラ見かけるようになっている。
しかし「さすがにそろそろ…」と思っていても、いざ終わってしまうと寂しさを感じずにいられないのが人間である。
ただひとつ言えることは『はじめの一歩』は頑張る勇気を与えてくれるマンガあるということである。
そして『いつからでもスタートできる』と背中も押してくれるのである。
私はすでにいい年齢だが、はじめの一歩を踏み出してみようと思う。
※カッコよく終わろうと思うあまり、我ながら意味がわからない終わり方になってしまったことを、一生の恥とする…
この記事を書いた人

ペンネーム:カッチン
普段は映画やドラマ、俳優に関するレビューを執筆。作品愛溢れる鋭いレビューには定評があり、YouTube・noteでもその洞察力を発信中。漫画の魅力を深く読み解く眼でその視点から、漫画作品の感想・考察記事を寄稿くださっています。