雑誌概要

『別冊マーガレット』は、集英社から発行されている月刊の少女漫画雑誌である。「別マ(べつま)」の通称で広く知られている。原則として刊行月の前月13日に発売される。

1963年12月、週刊誌『週刊マーガレット』(現『マーガレット』)の別冊季刊誌として「1964年お正月おたのしみ号」として創刊された。1965年には月刊化され、現在に至る。創刊当初の中心読者は中・高・大学生であったが、2020年時点では半数以上の読者が24歳以上となるなど、幅広い年齢層に支持されている。かつては読切作品を中心に構成されていたが、現在はほとんどが連載作品である。

『マーガレット』から派生した雑誌ではあるが、現在では独自に作家を育成しており、単行本レーベルが同一である以外は『マーガレット』との直接的な関係は薄く、独自の編集方針と世界観を持つ雑誌として確立されている。

特徴

  1. 王道から個性派まで幅広い恋愛描写:
    読者の主流である10代から20代の女性の心を掴む、胸キュン要素の強い王道学園ラブストーリーを多数掲載している。一方で、複雑な人間関係や心の機微を深く掘り下げた作品、コメディ色の強い作品、さらには社会問題を内包する物語など、一口に「恋愛」と言ってもその描写は多岐にわたる。読者の共感を呼ぶ等身大のキャラクターが多く、感情移入しやすい点が魅力である。

  2. 圧倒的な人気作家陣と新人育成:
    長年にわたり、くらもちふさこ、多田かおる、紡木たく、いくえみ綾、永田正実、河原和音、中原アヤ、椎名軽穂、咲坂伊緒、アルコ、目黒あむ、幸田もも子など、日本の少女漫画界を代表する人気作家たちを多数輩出し、その連載は常に注目を集めている。これらのベテラン作家陣の安定した人気に加え、新人作家の発掘にも積極的であり、新たな才能の登竜門としての役割も果たしている。

  3. メディアミックスの成功:
    『別冊マーガレット』の作品は、アニメ化、実写映画化、テレビドラマ化など、多岐にわたるメディアミックス展開が盛んに行われてきた。特に『君に届け』、『アオハライド』、『俺物語!!』、『オオカミ少女と黒王子』、『ヒロイン失格』、『思い、思われ、ふり、ふられ』、『消えた初恋』などは、原作の枠を超えて社会現象を巻き起こすほどの人気を博し、雑誌の知名度を大きく高めている。

  4. 「別マ」独自のブランド確立:
    親雑誌『マーガレット』から独立した編集方針を確立し、「別マ」という独自のブランドを築き上げてきた。その結果、特定の読者層からの絶大な支持を得ており、少女漫画誌の中でも確固たる地位を占めている。近年ではウェブでの試し読みやプロモーションにも力を入れている。

代表作品

『別冊マーガレット』からは、時代を彩る数々のヒット作や名作が誕生している。

  • 『いらかの波』(河あきら):
    高校の寮を舞台にした、友情と恋愛を描く群像劇。

  • 『愛のアランフェス』(槇村さとる):
    バレエの世界を舞台に、少女の成長と恋を描く。

  • 『いつもポケットにショパン』(くらもちふさこ):
    音楽学校を舞台にした繊細な青春物語。

  • 『伊賀野カバ丸』(亜月裕):
    忍者学校出身の少年が、東京の高校に転校してくる学園コメディ。アニメ化、実写映画化もされた。

  • 『愛してナイト』(多田かおる):
    ロックバンドのボーカルと女子大生のラブストーリー。アニメ化された。

  • 『ホットロード』(紡木たく):
    不良の少年と少女の純粋な恋を描いた作品で、社会現象を巻き起こす大ヒットとなり、実写映画化された。

  • 『イタズラなKiss』(多田かおる):
    天才イケメンとドジな女子高生の波乱万丈なラブストーリー。作者の急逝により未完に終わったが、アニメ化、実写ドラマ化(国内外)、舞台化など、繰り返しメディアミックスされた不朽の名作。

  • 『恋愛カタログ』(永田正実):
    高校生カップルの日常と、その周囲の人々の恋愛模様をリアルに描いた。

  • 『先生!』(河原和音):
    真面目な女子高生と、彼女が恋する教師の禁断の恋を描いた。実写映画化された。

  • 『悪魔で候』(高梨みつば):
    同居することになった義理の弟が学校の不良で、主人公を翻弄するラブコメディ。

  • 『ラブ★コン』(中原アヤ):
    高身長女子と低身長男子の凸凹コンビが繰り広げる学園ラブコメディ。アニメ化、実写映画化された。

  • 『高校デビュー』(河原和音):
    中学時代はスポーツに打ち込んだが、高校では「恋愛」に力を入れようとする女子高生の物語。実写映画化された。

  • 『君に届け』(椎名軽穂):
    陰気な見た目で周囲に恐れられている女子高生が、人気者の男子と出会い、友情や恋を育んでいく青春ラブストーリー。アニメ化、実写映画化、テレビドラマ化され、絶大な人気を誇る。

  • 『ストロボ・エッジ』(咲坂伊緒):
    片思いをしている女子高生が、人気者との出会いを通して成長していく学園ラブストーリー。実写映画化された。

  • 『青空エール』(河原和音):
    吹奏楽部と野球部を舞台に、高校生たちの努力、友情、恋を描く青春物語。実写映画化された。

  • 『ヒロイン失格』(幸田もも子):
    幼馴染への片思いをこじらせた女子高生のドタバタラブコメディ。実写映画化された。

  • 『俺物語!!』(原作:河原和音、作画:アルコ):
    屈強な見た目の男子高校生と、彼が恋をする純粋な少女のラブストーリー。アニメ化、実写映画化された。

  • 『アオハライド』(咲坂伊緒):
    過去に一度別れた男女が、高校で再会し、再び恋を育む青春ラブストーリー。アニメ化、実写映画化、テレビドラマ化された。

  • 『虹色デイズ』(水野美波):
    男子高校生4人の友情と恋愛を描く。アニメ化、実写映画化された。

  • 『町田くんの世界』(安藤ゆき):
    誰にでも優しく、不思議な魅力を持つ男子高校生を中心に描かれる人間ドラマ。実写映画化された。

  • 『思い、思われ、ふり、ふられ』(咲坂伊緒):
    タイプの異なる4人の男女が織りなす青春群像劇。アニメ映画化、実写映画化された。

  • 『素敵な彼氏』(河原和音):
    恋愛経験ゼロの女子高生が、目標とする彼氏を見つけるべく奮闘するラブストーリー。

  • 『テリトリーMの住人』(南塔子):
    引っ越しを機に新しい人間関係を築く女子高生と、個性豊かなご近所さんたちの青春物語。

  • 『恋を知らない僕たちは』(水野美波):
    男子高校生たちの友情と、それぞれの片思いが交錯する青春群像劇。

  • 『消えた初恋』(原作:ひねくれ渡、作画:アルコ):
    クラスの人気者が落とした消しゴムを巡る、勘違いから始まる男子高校生たちの恋愛コメディ。テレビドラマ化された。

  • 『太陽よりも眩しい星』(河原和音):
    中学時代は地味だった女子が、憧れの男子と同じ高校に入学し、自分を変えようと奮闘する物語。現在も連載中である。

これらの作品は、『別冊マーガレット』が長年にわたり、多様な読者の「恋」と「青春」を彩る物語を提供し続けてきた証である。