さあ、桜木が選手交代されてから、いったい戦況はどうなるのだろうかという、目が離せない展開で続いた12巻。
さっそくその行く末を見届けよう。
桜木が抜けてからは、ルーキー争いは清田と流川の一騎戦に突入。まあ、流川にはさらさら そんなつもりは無いのだが。
流川に花を持たせまいと、味方なんだか敵なんだかよくわからないヤジを飛ばす桜木。
なかなか点差を大きく埋められないまま、ここで大アクシデントが起こる。
湘北高校の大黒柱である赤木キャプテンのケガだ。
足首が大きく腫れ、一目見るだけで、これ以上試合に参加するなんて、素人目で見てもとんでもないことだと誰もが察知する。
湘北高校バスケ部メンバーに緊張が走る。
ロッカー室で応急処置を受ける赤木キャプテン。
試合参加は諦めるべきと、当然ながら諭す彩子さんに、赤木キャプテンは一ミリも譲らない。
「骨が折れてもいい・・・歩けなくなってもいい・・!!」
赤木キャプテンのこの一言に、どれほどの思いと、これまでの努力が詰め込まれているのだろう。
1年生の時から毎晩思い描いてきた海南高校との対戦。インターハイ出場を賭けた戦い。3年生として、最後になるであろうこのチャンス。
ここで試合から退くなんてことは、彼にとって万死に値するのだ。
この赤木キャプテンのセリフはズシンと胸に響いた。申し訳ないが、三井の「安西先生、バスケがしたいです」には不本意ながら納得できなかった私だが、この赤木キャプテンの言葉に、思わず涙がにじみそうになった。
赤木が、この戦いにどれほどの思いで挑んでいたのかを汲み取った桜木。
ロッカー室内の赤木に聞こえるように、「打倒海南!!」と強く叫び、試合へと戻る。
彼の背中には、今や赤木の分も夢と野望と責任が負われているのだ。
「ゴリの穴は俺が埋める」
・・・!
桜木!!
なんて成長しているんだ!!スキルも心も。
本当に本当のバスケットマンになりつつある桜木の雄姿に感動する。
ゴリ・・もとい赤木キャプテンの穴を埋めようと、彼の奥義「ハエたたき」を繰り出そうとするが、タッチの差で届かない・・・と、その時。
そう、こういうときにサポートするのが、流川なのだ。本当にかっこよすぎる。
と、このような感動的な場面なのだが、井上先生。ひとつだけツッコミをいれさせていただきたい。
というのも、実は私はこの「マガジンちゃんねる」とは別に、教育関連のサイトを運営していまして。
立場的にどうしても見過ごすわけにはいかないのである。
ここで登場する流川のセリフ「お前じゃ役不足だ」について。
「役不足」は、その人物に対して、与えられた役目が簡単すぎて不足しているということになってしまうので、ここでは「お前じゃ力不足だ」が正しいです。
とまあ、野暮なツッコミはほどほどに、ボールの行方を追う。
「キングコング・弟」。
ここにきて、こんな言葉が桜木から聞けるとは。感無量である。
赤木キャプテンから教わったことを細かく思い出す桜木。
教えをひとつひとつ、細かいところまできちんと聞いていて、覚えていて、そしてそれを実戦で生かそうとしている桜木の姿。
安西先生にして「大人になった」と言わしめるのも当然である。
点差は9点。赤木キャプテンが戻るまで、この点差で死守しようと必死の桜木。
流川もまた、負け試合にしてなるものかと、静かに心を燃やしていた。
ちょっと本筋から離れるが、ここの展開での、宮城リョータの横をすり抜ける海南高校のパス回しの描写。
ボールが奥から目の前をすり抜ける様子が、見事に絵で表現されている。
まるで、紙面の奥からボールがものすごい速さで飛び出てきているような感覚を覚えるのだ。
井上先生の構図のセンスと、画力のハンパなさを改めて見せつけられた。
試合はと言うと、流川のスーパータイム突入。
ビシビシと一人でシュートを決めていく。彦一姉さんが「自己中心なプレイはキケン」と不穏な一言を残したが、点差はあっという間に5点まで縮められた。
完全無敵状態である。
そんな流川の気迫に、彦一姉さんもくるりと評価を「自己中心的ではない、もはやゲームを支配している」と一転。点差はとうとう2点に。
ここで、桜木のさらなる成長を見ることができる。
なんと、海南の執拗なディフェンスに、手も足も出なくなったときに、桜木から流川へパスを回したのだ。
「ゴリの穴を埋める」
この思いが、彼を変えたのだろう。本当に感動的である。
しかしこのとき渡したパスが、流川の劇的にかっこいいダンクへとつながり、晴子さんの目がまたもやハートになってしまったのには、桜木も後悔を禁じえなかったことだろうと思うと胸が痛む。
それにしても、この流川のダンクが、超人的すぎる。
シュートする流れの手の動きを、一度戻してまたダンクへ。
これを、ジャンプ中の動作としてやってのけたのである。
果たして、人間にこんな動きが可能なのだろうか。
野暮なことは言うまい。流川ならできるのだ。
そして、とうとう、とうとう。同点へとこぎつけた。
とんでもなさすぎる。
そんな中、試合会場へと舞い戻ったのが、赤木キャプテンだ。
同点のスコア表を見て、ここまで、自分が戻るまでに。チームメンバーがいかにしてゴールを相手から死守し、いかにしてボールをもぎ取り、点へつなげたのか。
彼は一瞬にして感じ取っただろう。彼らの間に、余計な言葉はいらないのだ。
もう大丈夫と言う赤木キャプテンの横で、不安そうな表情を見せる彩子先輩。とてもじゃないけど大丈夫ではなさそうだ。
「歩けなくなってもいい」という赤木キャプテンの言葉が脳裏をかすめる。
まさか。
この試合で無理したことをきっかけに、選手生命を絶たれることになどならないだろうか。心配でしょうがない。
「彼の足が無理だと判断したら、私がとめる」
安西先生!!!!!
安心感が半端ない。
安西先生も、ケンタッキーおじさんからどんどんと株を上げてくるではないか。
後半開始。
ジャンパーを務めようとする赤木の様子をひと目見た桜木が、とっさに交代する。
外野からは、「目立とうとしているだけ」という野次が飛ぶが、今なら自信を持って言える。
間違いない。赤木をかばっているのだ。
晴子さんにも、どうか桜木のこの漢気に気が付いてほしいと願ってやまない。
ジャンプボールを無事に制した桜木。ボールがあらぬ方向へ行ったのはご愛敬だ。
そして、すかさずシュートを決めたのは・・・そう、赤木キャプテンだ。
同点から始まった後半戦。
つまり、湘北がリードしたのだ。
ここまでアツい展開があるだろうか。
スラムダンク、ずっとずっと最高潮をキープする恐ろしい漫画である。
最高潮をキープしたまま、14巻へと続く・・・・